白雪千夜「足りすぎている」
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231:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 22:06:28.18 ID:1/ZkFkMM0
「あの人に何をしたと言われても、私にお答えできることなどありません」

 コーヒーを一口飲んでみると、思った以上に苦くて軽くむせそうになった。
 しかし、「何でもいい」と言った手前、砂糖とミルクに手を出すのは気が引ける。

 先ほどの言われようと、口の中に粘つく苦みに対するイライラが重なり、つい喧嘩腰になってしまう。

「あなたこそ、なぜちとせさんをあんなにも重用したのでしょう?
 誰もに勝る美貌こそあれ、あの人は並みの体力も持ち合わせておらず、レッスンは難航を極めたはずです。
 この事務所のトップアイドルではなく、フェスの失敗というリスクを背負ってでも、新人であるあの人を抜擢した理由は何ですか?」


 ――途端に、常務は押し黙り、視線を外して虚空を見つめた。

「常務……何か?」

「事務所内でも、反発はあった」

 カップを手に取り、一口啜る。
 その仕草に、私は強烈な既視感を覚えた。

 カップを持つ右手の手首を、軽く握った左手の上に乗せる、特徴的な持ち方――。



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