20:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 21:22:33.10 ID:QXbKSZYO0
――そっと、お嬢様のお顔を覗ってみる。
お嬢様は、何も言わずにニコニコと笑ったままだった。
私は、この男の前で笑ったことなどない。
どういうことか、まるで意味が分からなかった。
理解できないことは、無視するに限る。
これまでもずっと、そうしてきた。
依然として態度を崩さない岩のような男を前に、私は咳払いを一つして気を取り直した。
「もう一つ。雇用形態はどうなるのでしょうか。
私はアイドルとなる以前に、黒埼家の従者です。
あなたが私の専属の指導者となるとしても、黒埼家以外の者に隷属するつもりはありません」
お嬢様が小さく笑う声が聞こえた。
だが、私にとっては決して小さくないことだ。
「弊社が甲で、黒埼さんや白雪さん……正確には、お二人とも未成年ですので、お二人の代理人となる方が乙となり、346プロと専属契約を結ぶことになります。ですが」
男は、これ以上正す必要がないと思える姿勢を、今一度正した。
「私が担当のプロデューサーとなり、あなた方がトップアイドルとなれるよう、共に歩むことになります。
両者は優劣のある関係などではなく、立場としてはパートナー、すなわち対等とお考えいただければと思います。
遠慮は要りません」
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