白雪千夜「足りすぎている」
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19:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 21:20:23.12 ID:QXbKSZYO0
 話を聞くと、男の芸能事務所――346プロダクションには、事務所が有する女子寮がその敷地内にあるらしい。
 地方から上京するアイドル達の生活を支援するものであり、大手故にセキュリティも、万が一の医療体制も万全。
 これまで探してきた都内のどの物件よりも、今後の私達に理解のある住まいとなるのは明らかだった。
 4月から通うことになる学校にも、電車で二駅ほどしか離れていないらしい。


「お聞きしたいことが、二つあります」

 この346プロダクションに入るほか無いというのなら、それでもいい。
 問題は、この男がどれほど本気なのかだ。

「客観的に見て、私はアイドルとしての魅力を満足に備えているとは思えません。
 まず、私をスカウトした理由を教えてください」

 お嬢様やおじさまに強く要望されたから、と答えるのであれば、それでも構わない。
 しかし、仮にも大手の芸能事務所が、こんなにも簡単に候補生なるものを引き入れるものだろうか?
 選り好みのきらいが少しも感じられないのはいかがなものか。


 男は、私以上の仏頂面を少しも変えることなく、抑揚の無い声でまっすぐ言い放った。

「笑顔です」



「……笑顔?」
「はい」



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