白雪千夜「足りすぎている」
1- 20
195:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 18:20:02.58 ID:1/ZkFkMM0
 修復不可能な傷を受けた心は、そのまま放っておくと他の部分まで侵食し、壊死してしまう。
 当時の私は、おそらく無意識的にそう考えたのだろう。

 だから、切り落とした。
 悲しみも、それまでの思い出も、丸ごと投げ捨てると、私の心は文字通り軽くなった。

「実際に、家を燃やす炎を、この目で見たわけではありません。
 ただ、それでも夢を見ます。炎が荒れ狂う夢……大切なものが、燃えていく夢。
 いずれ失われていくものであるなら、何も求めないのだと、心に決めました」


 我ながら、人の生存本能というのは大したものだと思う。
 おかげで私は、負の感情に心を腐らせることなく、今も生きている。
 この目に映るもの、触れて感じるものから主観を排した今では、致命的な痛みや苦しみを感じることなど無い。

 そして、何よりありがたいのは、そのような人形と化した私にさえ、生きる意味を与えてくれる人がいたことだ。

「黒埼のおじさまと私の父は、古くからの友人同士だったようです。
 私の境遇を知ったおじさまは、私を黒埼の屋敷へと招き入れ、そこで二年間過ごしました。その後、ルーマニアへ……。
 私に良くしていただいたお嬢様は、私にとってかけがえのない、恩人と言うべき方です。
 故に、アイドルになることも、アイドルを続けることも、お嬢様に依存した故の成り行きに過ぎません」



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
301Res/285.11 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice