白雪千夜「足りすぎている」
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142:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 15:21:52.35 ID:1/ZkFkMM0
 驚く私を見て、アーニャさんはクスッと笑った。

「スパシーバ、チヨ。
 でも、人を疑うより、信じる方が、楽しいですね?」

「信じた末に、裏切られることになったとしても、ですか?」

 彼女の言っていることは、詭弁だ。
 あるいは、無知であるが故の夢想。
 世の中、良い人間ばかりとは限らない。

「信じることを決めたのは、アーニャです。
 だから、裏切られて、悲しい思いをしたとしても、それはアーニャのせい、ですね」

 アーニャさんは、かぶりを振った。


「アーニャは、ワガママです。自分で決めたい……誰かのせいにしたくない。
 誰かの助けになったとしても、誰かに傷つけられたとしても、自分の気持ちで、受け入れたい。
 アーニャのいる世界は、アーニャの足で歩きたいです」


 アーニャさんの瞳は、私を真っ直ぐに見つめていた。
 その気迫から、私にその言葉をしっかり届けたかったのだろうという意志は明確に感じ取ることができ、実際それは、私の心に強く突き刺さった。

 決して平坦では無かった過去。
 それでも「我」を見出すことを選択した今。
 彼女は、常に黒埼家に依存してきた私の生きてきた世界とは、全く違うところにいる。

「だから、チトセを……そうしたいと、自分で決めたチトセを、アーニャは応援したいです」



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