白雪千夜「足りすぎている」
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140:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 15:15:45.94 ID:1/ZkFkMM0
 アーニャさんは、私から視線を外し、手すりを掴んでその先を見つめた。
「一人ぼっち……小樽で運河を、ボーッと眺めていたアーニャに、声を掛けてくれた女の子がいました」

「小樽、ですか……」
「ダー♪」

 その女の子はアーニャさんの二つ年上で、アーニャさんの知識ではほとんど理解ができない日本語だったという。
 よほど北海道訛りの強い子だったのだろうか。

「でも、色々なお話、してくれました。
 言葉は分からなくても、明るい笑顔で、楽しそうに話すのを見て、アーニャも、楽しくなりました」
「分からなくても、ですか?」
「ダー。アーニャの手を引いて、いっぱい色々な所へ連れて行って、遊んでくれました。
 とても寒い日だったけど、さよならをする頃には、体も心も、ポカポカですね」

 良い人に巡り会えたのだなと思う。
 名前も顔も知らないどころか、言葉さえ分からない他人と四六時中遊び倒すなど、よほどの暇人か奇人――。

「その時、アーニャは、教えてもらいました」

 こちらに振り返り、ニコリと笑う。

「アーニャは、色々な子と、お話するようにしました。
 言葉は、ンー……あまり、伝わっていなかったかも、ですね。でも、たくさん話しました。
 そうすると、友達、たくさんできました。アーニャも、皆も明るくなって、とても嬉しかった。
 寂しかった時には、皆近づいてくれなかった。でも、それはアーニャが、寂しかったから、ですね?」



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