81: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/10/07(月) 00:51:22.11 ID:a3VuJV360
幸せに生きたかった。姉さまがいれば冷たい雨も熱い日差しもへいちゃらだった。どんな困難でも、二人ならば生きていけると思った。生きてきた。
孤独が肌を刺す。
こんな静寂には堪えられない。
だから、扉を銀髪の彼女が押し開けて、安物のスツールに座ったとき、私は正直ほっとさえした。喜びに涙さえ込み上げてきたのである。
「……」
グラーフの怜悧な瞳が活字を追っている。麻雀のデジタル理論についての本らしかった。
麻雀は苦手だ。まるで勝てないから。
「……」
「……」
互いに無言だった。このグラーフ、この部屋に何も言わずやってきて、おもむろに本を読みだし、微動だにしない。なんなのだ。
「……何か用があってきたんじゃあなくて?」
「そういうわけではない」
否定疑問文に否定で返されると一瞬混乱する。日本語特有の曖昧さ。
文法語法に厳格ときくドイツ語では、こんな意味の錯綜は起きないのだろうか? 聞いてみようとも思ったのだが、グラーフが案外真剣に麻雀の教本を読んでいるので、少し面喰ってしまう。
少なくとも賭け事に長じているようには見えないが。
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