9: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:17:02.03 ID:FCK0uUJh0
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『……なーにが“いいことが起こりそう”だよ。やれやれ……災難だな、本当』
げんなりしていた。原因は簡単だった。ケータイを落としたのだ。
全く進展を見せないスカウト活動に精を出し、二度ほど変質者として通報しますよ! と脅された帰り道。なんでも新進気鋭のアイドルグループがライブイベントをしていたらしく、通りはかなりの人混みだった。そしてそこを何とか押し通ろうとした。
俺だって興味がないわけじゃない。伊達でアイドルプロデューサーを目指しているわけじゃない。だから視察……というと偉そうだから見学ということにしておいて、そのライブが行われる場所に行った。
それが良くなかった。いやあ、凄い人だった。通りの人混みなんて足元にも及ばないほどの人だかりで。おかげでどこの誰がライブをやっているかも分からなかった。遠くから聞こえてきた歌声は、そのほとんどが歓声のせいでかき消された。
(骨折り損のくたびれ儲けだな、これじゃ)
内心苦笑をしながらその場を離れようとしたのだが、まあ、そう簡単に抜け出せるはずもない。歩行者天国どころか満員電車の車内のような有様。
そして三十分ほどかけてようやく道の端っこにたどり着いた時に気付いた。ケータイがない、と。
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