8: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:16:11.11 ID:FCK0uUJh0
『うだうだ考えてないで、もう一回出かけるかな』
それでもいい加減、何か成果を出したいと思っている。いや、そんなものは三年も前からずっとだ。一応、数少ない人脈を伝って小さなインディーズレーベルと懇意にさせてもらっている……と俺は思っているけれど、それは成果とはとても言えない。
プロデューサーとしてのいろはさえ知らなかった俺に、ちょっとしたアドバイスをしてくれた人たちというだけだから。ちなみに二回目からは講義料を取られた。その分しっかりとは教えてくれたけれど。
彼らと働くことは考えた。だが採用してもらえるとは限らないし、採用してもらえたとして、たぶんそれはプロデューサーとしてではない。分不相応と言われようとも、俺はプロデューサーになりたいと思う。
だがこの三年で俺は俺の夢がいささか無謀だと知りつつあって、でも諦めはしなかった。やる気だけは有り余るほどあるのだ。それが俺の“持てる限り”なのだとすれば、やる気を損なうわけにはいかない。
ひとしきり休息を取った俺は、やがてリクルートスーツよりかは幾らかモダンでシックなスーツに着替える。二着三万円のたぶん安い部類それは、上京する俺に最後まで反対していたお袋と親父が、それでもと買ってくれた贈り物。
『おーし、じゃあ行きますか!』
大切なスーツでびしっと決め、そんな風に気合を入れる。ああ、なんだかいいことが起こりそうだ。
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