10: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:17:29.59 ID:FCK0uUJh0
最初はスられたとも思ったのだけれどあんな型落ちもいいところのケータイ、金を貰ったって欲しがる人はいないだろう。だが俺にとってはかけがえのないケータイだった。あの動画を見れるのは、あのケータイだけなのだから。
(……こんなことなら早々に買い替えておくべきだったかな。ああ、ちくしょう)
今更悔いても仕方がない。一縷の望みをかけて最寄りの交番へと向かいながら、俺は嘆息する。もっとも、あのデータをどうにかして残しておく術は限られていたと思う。型落ち過ぎて吸い出す手段はないだろう。
メールに添付するにせよ、サイズが重すぎて――あくまで当時の基準だが対応していない始末。いまならクラウドとか、ファイル共有サイトとか、そういう便利なサービスが仕えたんだろうなと思わずにはいられなかった。
『……届いていると、いいなあ』
そんな風に思いつつも交番へとやってきた俺は、中のデスクで座っていたお巡りさんに声を掛ける。人の好さそうな、まだ若い人だ。
『あの、すみません。ケータイ落としたんですけど。……届いてないですかね』
「うん? ケータイ? スマートフォンですか」
『ああ、スマホじゃないです。何でしたっけ、ガラケーです』
「なるほど、ガラケー。落としたのはいつ頃ですか?」
『本当についさっきです。一時間も経っていなくて……』
「わかりました、確認をしますのでそちらに座っていてください」
お巡りさんはそう言って遺失物を管理しているだろう奥の部屋へと消えていく。
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