11: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:18:30.13 ID:FCK0uUJh0
(あの様子じゃ多分届いていなさそうだな……)
そんな風に悲観的に考えつつ、とりあえず傍のパイプ椅子に腰を掛けた。それから三分ほど経つ。お巡りさんはまだ戻ってこない。
『やっぱり駄目そうだな……』
肩を落とした、その時だった。
「――すみません。落とし物、届けに来たんですけど」
交番内にそんな声が響いた。妙に耳に残る少女の”凛”とした声。俺はふと、俯いていた顔を交番の入り口へと向ける。
刹那、びりりと体中に電気が走ったかのような感覚。
そこにいたのは声の印象に違わない、クールな印象を受ける一人の少女だった。
黒髪と呼ぶには幾らか茶色がかったロングヘアーが風によってかすかに揺れ、耳たぶにあるピアスが見える。外国の血が入っていないだろうに、その瞳は光の加減か、僅かに碧が含まれているように見えなくもない。
どこか気だるげな表情は無愛想と評されることもあるだろう。どこかを見ているようで見ていない……とてもつまらなさそうな、そんな目つきの鋭さも相まって、キツめの印象を与える。
だが俺にはその胡乱な目がなぜか、ひどく目に留まった。何かを秘めているようなその奥にある既視感。
気が付けば全くの無言で、全身全霊彼女を凝視していた。
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