モバP「持たざる者と一人前」
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12: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:19:01.49 ID:FCK0uUJh0
(――この子しかいない)

 うわごとのように俺は思う。そして声を掛けようと思って……今自分のいる場所を思い出す。交番だ。ああ、くそ。流石にそこまでネジは吹っ飛んでいない。喜ばしいことだ、多分。でも、ちくしょう、この機会を逃すわけには。

 そんな葛藤を抱いている俺に彼女も気付いたらしい。ただ、単に先客として扱われたのだろう、軽く会釈だけを俺に向けてから覗き込むように交番へと入ってくる。

 もうこの季節には暑いだろうに、長袖と思われるシャツにカーディガンを羽織った彼女。第一ボタンを開けて緩めたネクタイと首元にあるシルバーのネックレスが映える、なんとも都会の女子高生という感じだ。

 それからグレーのスカートから伸びるすらりとした脚。いや、男ならそういう物に目を取られるのは仕方ないと強弁したいところだけれど、そういう物を差し引いても彼女の制服姿はひどく似合っている。

 なんというか垢ぬけている。そして学生にありがちな軽率さをそこまで感じない。崩れた制服から遊び人の印象を受けてもおかしくないのに、雰囲気は落ち着いている。

 そこにあるのは第一印象の無愛想さが転じた、ある種の実直さだと気づくのに時間はかからなかった。堂々としているというか、度胸があるというか。一言でいうと、「真っすぐ」というのが似合う。



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