41: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/15(木) 16:31:44.28 ID:p4U+w2zG0
「……あっ、携帯電話の人」
彼女がそう言った。どくん、と心が跳ね上がる。良かった、記憶には残っていてくれた。そのことにどうしようもないほど嬉しさを感じつつも、客観的に考えれば驚くほど気持ち悪いと思うので表には出さず、
『そ、そうです、そうです。たまたまお見掛けして、それであの時のお礼を改めてって思って。本当に、ありがとうございました』
「そんな、気にしなくてもいいのに。誰だって届けますよ」
嘘です。めちゃくちゃ探し回っていました。見つけられたのは本当にたまたまだったけれども。心の中で謝罪しつつ、こうして彼女と話せている現状がとてつもなく嬉しくて。
だから思わず、
『ところで……アイドルに興味はないです?』
そう訊いてしまった瞬間の、彼女の詐欺師を見るような目を……俺は二度と忘れないだろう。
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