37: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/15(木) 16:29:36.83 ID:p4U+w2zG0
『……探しますかね。あの子を』
だからそれが今の俺のできる唯一のこと。もちろん見つかるはずもないだろう。そもそもこの街の住人ではない可能性すら高い。そりゃそうだ、昼間人口と夜間人口が数倍以上ある街なのだから。
遠いところから、たまたま遊びや用があってきていただけ――。そんな可能性も当然ある。でも妥協はしない。できない。そんなことをしてしまえば、夢が夢じゃなくなってしまう。
俺が出来るのは、俺の“一人前”を果たすだけ。それがたとえ、誰かにとっての“半人前”だったとしても。
俺はゆっくりと街中を歩き始める。ひとまず、あの交番付近からかな。駅前もいいかもしれない。制服から学校を割り出す……のは、流石にまずいだろうか。もう覚えていないからどうしようもないけれども。
周囲を見渡して、何度もあの後ろ姿を幻視した。そして何度見ても、そこに彼女の姿はない。
……それがここしばらくの話。少女と社長、その衝撃的な二つの出会いからもう二週間ちょっと。
今日も朝から街を歩いた。時にはコンビニ夜勤のシフトを外してまで歩いた。歩いて、歩いて、歩いて、歩き続けて。それでも彼女の姿は見つけられない。
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