28: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/08(木) 19:03:42.48 ID:caute9RW0
『あぁ、どうするかなあ、ほんと。俺もなあ、これ、完全に手詰まりだよねえ』
こんな状況下でもポジティブシンキングが出来るほどたくましくはないわけで。もっとも、ポジティブに考えたところで何かが変わるはずもない。
このインディーズレーベルはある意味、俺にとっての命綱だと思っていた。最後の最後、本当にどうしようもない時の駆け込み寺なんだって。これはそんな失礼なことを思っていた報いなのかもしれない。
そろそろ本格的に身の振り方を考えなければならないか、とため息をついた時だった。
かん、かん、かん。廊下の向こう、さびた鉄階段がある方から小気味の良い音が響いた。それはだんだんと大きくなっていく。どうやら、誰かが階段を上ってきている。
そう思ったときにふと思った。ここは上階までインディーズレーベルが借りてたはず。だからレーベル撤退後すぐに入居ということがない限り、上にテナントは入っていないはずだ。
いったい誰だろうか。僅かにそんな興味が掻きたてられる。けれど、今のこの沈んだ気分の俺にはあまりにも小さすぎる意欲過ぎて。俺は座ったまま、廊下の床を眺めていた。
やがて階段を上る音は途切れ、今度はこつり、こつりという足音が聞こえる。それはどうやら、こちらへとやってくるらしかった。
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