1:名無しNIPPER[saga]
2019/07/26(金) 17:15:45.34 ID:XLNzjGnq0
◇
「いい天気っすね〜!」
到着して開口一番、あさひはそう言ってあたりを見まわした。
確かに、雲一つない日本晴れで気持ちがいい。春から夏にかけて色を濃くした新緑が、ロッジの周りをぐるりと取り囲んでいて、普段ビルばかり見ている反動からか軽い感動すら覚える景観だ。
「何がいいのよ……」
「あっついね〜……」
ただし、それはあくまでも「景色が良い」というだけの話であって、長時間の運転をしてきた身から言うとどちらかというと後者の二人に賛同したくなる。
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2:名無しNIPPER[saga]
2019/07/26(金) 17:17:24.87 ID:XLNzjGnq0
「出演予定だったタレントが急遽出れなくなったらしくてな。向こうの知り合いから、良かったら代役として出てくれないかと――」
3:名無しNIPPER[saga]
2019/07/26(金) 17:18:40.70 ID:XLNzjGnq0
――流石に、プロデューサーとはいえ男なんだから俺はホテルに泊まった方がいいと思うんだけど。
そう説明した時の冬優子の表情は筆舌に尽くしがたく、あんた、ふゆにあさひ押し付けてホテルで寝泊まりするつもりなの? というメッセージがありありと見て取れた。それで、愛依とあさひにも了解を取って俺もここに泊まることになったのである。
4:名無しNIPPER[saga]
2019/07/26(金) 17:19:25.08 ID:XLNzjGnq0
四人で泊まるには充分な大きさのロッジに荷物を置いてから、俺はあさひに駆り出されて周辺を歩き回ることになった。幸いにもリビングにクーラーがあったため、愛依と冬優子は休憩をするとのこと。
少し下がった土地の所に、2〜3他の別荘が見える。様子を見るに、人は来ていないようだった。
5:名無しNIPPER[saga]
2019/07/26(金) 17:20:07.84 ID:XLNzjGnq0
裏山には入らないようにしろよ――。
なんですかそれ。そう聞くと、わからん、とだけ。なんでも、声をかけてくれた人からそれだけ言われたらしく、詳しい事情はわからないらしい。まあ、触らぬ神になんとやらである。
6:名無しNIPPER[saga]
2019/07/26(金) 17:23:00.56 ID:XLNzjGnq0
陽が沈みかけたころロッジに戻った俺とあさひは、寒いくらいのクーラーの中穏やかな表情で眠る二人を起こしてからバーベキューの準備を始めた。ここに来る途中、スーパーで食材を買っておいたのだ。
高い肉ではなかったが、やっぱり炭火で焼くと美味しく感じる。
7:名無しNIPPER[saga]
2019/07/26(金) 17:24:07.71 ID:XLNzjGnq0
食後、風呂に入ってからリビングに集まって、TVを見たり愛依の持ってきたトランプで遊んだりして過ごした。
大富豪をしていて気づいたのだが、冬優子と愛依は表情に出るタイプのようだった。
8:名無しNIPPER[saga]
2019/07/26(金) 17:26:18.80 ID:XLNzjGnq0
「あ、そうだ。あさひには言ったんだけど、社長から裏山には入らないように言われてるから、冬優子と愛依もそこだけは気を付けてほしい」
お開きになったところで、二人にも一応言っておく。
9:名無しNIPPER[saga]
2019/07/26(金) 17:27:00.56 ID:XLNzjGnq0
◇
当然ながら、俺は別室で寝ることにした。部屋を出る前、冬優子と愛依にはあさひが裏山に行く可能性がないこともないから、気を付けてもらうよう耳打ちしたので、絶対、ほぼ、多分、おそらく……、大丈夫かはわからないけれど、念のため寝すぎないようにしておこう。と、そこまで思ってから、ぐったりという表現がふさわしい疲労感が全身にへばりついてきた。
10:名無しNIPPER[saga]
2019/07/26(金) 17:29:26.44 ID:XLNzjGnq0
◇
つんざくような高音。ドタドタという、何かが走り回るような振動。
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