鷺沢文香「本に、命を」
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31: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 16:07:33.67 ID:UfnhAP/w0
そう、私がしたことは、彼の本に栞を挟んだ、ただそれだけ。
紅く朱い紙を重ね、開きグセを付けてしまわないようになるべく薄さを保ち、
それでいて丈夫さも求めた、欲望をこれでもかと詰め込んだ栞。
その栞に、誰が所有するのかすぐわかるよう、彼の名を書き記して。

そしてそのとき、彼の机に置いてあったのは雑誌見本でした。
つい先日、ちょうどお仕事で撮影した私の写真が掲載されていたもので、
その見開きで私が居るページに、栞を。
その意図を、それが意味するところを、読み取ってくれたようです。

語りかけから数瞬。
かちゃりとカギをかける小さな音を背に、彼は靴を脱いで私の方へ近付いてきました。
それを私は、少しずつ両の膝を開きながら迎えます。

彼の視線は、もはや逸らされることなく私を凝視していました。
私はするりするりと靴下が畳を滑る音に耳を傾けながら。
スカートの裾をそっとつまみ上げると、やっと、意を決したようにプロデューサーさんがしゃがんで、
座って、それを通り越して寝転がるように、…顔を、差し入れてきました。

震える呼吸と、それでも離せない視線を感じて、
壁を背にしていなければきっと仰け反り達していたと確信するほど、
ぞくぞくぞわりと痺れが駆け巡ります。


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