30: ◆jEbRvHU8C2[sage saga]
2019/07/14(日) 16:07:04.30 ID:UfnhAP/w0
部屋へと入り、後ろ手に扉を閉めた彼が、そのまま微動だにせずに私を見て。
瞬間、本当に、…本当に、久しぶりに眼があいました。
ああ、ああ、私のために、私のメッセージを読み解き、私を見てくれた。
いわゆる推理小説で、探偵に追い詰められた怪盗も、もしかしたらこんな昂揚感を抱くものかも知れません。
彼が私の名を呼びます。
呼びつつも微動だにしないのは、恐らく、ここに至った答えに彼が確信を持てないから。
本当にそれが正しいのか、間違っていた場合の返上できない失態が怖いから、でしょう。
手に取るようにわかってしまうのは、ともすれば今の彼が以前の私にどこか似ているからか、それとも。
ただ、今の私が考えるべきはそれでなく、するべきは。
名を呼んで貰ったことへの返事をしながら、立てた両の膝裏に挟んでいたスカートの裾を、そっと解放しました。
風通しを感じるとともに、彼が息を呑んで眼を逸らしたことで、『見て貰えた』ことを感じます。
あと、一押し。
平静を装って、彼に語りかけます。以前のように、そっと、そっと。
せっかくですから押しバナでもしてみませんか、と。
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