紬「エスパー少女は17歳」
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22:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:04:33.79 ID:lCVrPTby0
 その日以来、ときどきムギセンパイとラーメン屋に行くようになった。

 いまだにひとりでは入りづらいようで、私はいつも付き合わされる。

 ムギセンパイは何杯もラーメンをお替りする。食べても食べても太らない。その身体のどこにラーメンが消えてゆくのか。不思議でしかたない。太りやすい体質を気にしていたはずなのに。超能力のカロリー消費量はかなりのものらしい。役得ね、とムギセンパイは嬉しそうに言っていた。


23:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:06:13.13 ID:lCVrPTby0
 私たちは雑談にふける。放課後はお茶とお喋りの毎日だというのに、それでも話のタネは尽きない、
 私とふたりのとき、ムギセンパイはやたらとコイバナをしたがる。

 梓ちゃんは彼氏とかいなかったの? 中学校は共学でしょ? 共学だからって彼氏がいるとは限りませんよ。そのとき、ぶるぶるとケータイが震えた。こっそり見ると律センパイからのメールだった。あ〜彼氏でしょ。ムギセンパイが楽しそうに訊いてくる。違います。私は淡々と答える。うふふ、隠したってムダよ。ムギセンパイは意味ありげに笑う。人の心は読めないって言ってはずだけど、本当だよね? ムギセンパイはにこにこ楽しそうだ。やっぱりこのひときれいだな。ニンニクくさいけど。



24:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:13:21.94 ID:lCVrPTby0
「センパイはいないんですか? 彼氏とか」

「彼氏? うーん、今はいないよ」

「じゃあ、どんなタイプが好みなんです?」
以下略 AAS



25:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:14:20.21 ID:lCVrPTby0
 秋になり、冬が来て、年を越し、桜が咲いて、散った。緑のまぶしい季節を過ぎると、今週はずっと雨ばかり。梅雨に入った。

 日曜日も雨だった。

 朝から降り続ける雨のせいか、ラーメン屋はいつもよりさらにお客が少ない。店員さんは口を半開きにしながら、店内のテレビを眺めていた。
以下略 AAS



26:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:15:12.12 ID:lCVrPTby0
「なんですか。それ」

 私はすっかり忘れていた。

 スプーン曲げを見せてくれたのは初めの一回だけだったし、このころじゃもう、コイバナばかりで超能力の話は全くしていない。気づけばムギセンパイの誕生日までひと月を切っていた。18歳になってしまえば、超能力はなくなってしまう。時間があまりない。


27:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:15:57.67 ID:lCVrPTby0
「で、すごいことってなんなんです」

「どろぼう」

「はぁ!?」
以下略 AAS



28:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:18:17.22 ID:lCVrPTby0
 私は思わず大声を出した。店員さんがギロリとこちらに視線をよこした。

「すみません、あの、自分でなに言ってるかわかってますか?」

「もちろんよ」
以下略 AAS



29:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:19:04.65 ID:lCVrPTby0
「だいたい、どろぼうって、なに盗むんです」

「鯉よ。学校の。噴水のところにいる」

「はぁ?!」
以下略 AAS



30:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:20:14.39 ID:lCVrPTby0
「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ。梓ちゃん落ち着いて」

 噴水の鯉なら知っている。人面魚と評判の不気味な鯉で、私も一度だけ見たことがある。濁った水中を泳ぐ姿は、噂通り気味が悪かった。それをいったい、どうやって? そもそも、どうして?


以下略 AAS



31:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:20:54.22 ID:lCVrPTby0
「公私混同よ。鯉が可哀そうだわ」

 ムギセンパイは静かに、けれど確かに怒りを湛えた口調で言った。
 確かに鯉は哀れだった。
 生徒や教師、学校中から不気味と言われ、飼育担当である生物委員にさえ、避けられていた。本当は毎日餌をやらないといけないのに、一年のとき生物委員だった純は、三日に一度しか餌やりをしていなかった。私が咎めても、鯉は強いから大丈夫、とへらへら笑って取り合わない。私もそれ以上は言わなかった。完全に他人事だったし。
以下略 AAS



32:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 22:22:08.20 ID:lCVrPTby0
「だからわたしが鯉を救うの。そうしたらみんなきっと気づくわ。いなくなって初めてわかるのよ。大切なものの存在に」

 眉をきりりと吊り上げ、瞳をらんらんと輝かせ、ムギセンパイは断言した。このひとはマジだ。

「あのう、で、鯉を、どうやって?」
以下略 AAS



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