21: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:29:09.92 ID:RAUxaTtJ0
でも、どれほど努力をしたところでどうにもならないことがこの世にはあるのかもしれない。
私みたいな英国人が大和撫子になるなんて最初から無理な話なのかもしれない。
だって外見がこうだ。いくら覚悟を決めても、意地を張っても事実は事実のまま変わることはなくて。
花は咲かない。芽も出ない。土を汗と涙で湿らせているだけのこの花が咲く日など訪れるのだろうか。
それに、そもそも。
この必死に育てているものは果たして撫子なのだろうか。
いくら中身を磨いても、咲いた花が薔薇だったら? 薔薇は決して撫子になれなどしない。
けれど種はもう土の中にあって、これを薔薇ではないと証明できる術を私は知らない。撫子だと知るためには咲かせるしか方法を知らない。
花は咲くの? 蕾はつくの? 芽は出るの?
この花は撫子なの?
私は本当に大和撫子になれる?
ねぇ。
だれか、おしえて。
十一歳の誕生日、両親から着物をもらって部屋で着た私はあまりの不釣り合いさに泣いてしまった。
あの日から何も変わらない。浮かれた英国少女が着物を着ているだけの像が鏡に反射していた。
部屋で問いかけても答えを返してくれる人はおらず。代わりに部屋に飾った撫子の鉢植えは冬のくせに憎らしいほど艶やかに咲いていた。
41Res/36.45 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20