【ミリマス】私という撫子の
1- 20
22: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:30:44.44 ID:RAUxaTtJ0
 だからといって大和撫子を諦めることもできなくて。あの日感じた胸の高鳴りを忘れることができなくて。日本語を勉強し続けた。日本舞踊も、独学の茶道も続けた。
 今さら、この道を引き返すことはできなかった。振り返っても暗闇の道をそうできるほど私は強くも弱くもなかったのだ。

 そうして迎えた十二歳の夏。

 父が帰ってくる少し前から突然強い雨が降りだした。傘は持っているのだろうか、などと考えていると玄関が勢いよく開き、ずぶ濡れの父が入ってきた。

『エミリー!』
「Wow! お父さん!? 早く身体拭かないと風邪ひいて……」
『そんなことはどうでもいいんだ!』

 父は床が濡れるのもお構いなしに私に近づいた。開けっ放しの扉から雨に濡れた土の匂いがする。風が吹きこんで私も少し雨に当たる。だけど不思議と悪い予感はしなくて。

『聞いて驚くなよ』

 それは父の瞳が輝いていたから。あの日見たものとよく似た目の輝きだったから。

『来年から日本への赴任が決まったんだ』
「え……」



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
41Res/36.45 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice