50: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/08/31(土) 00:31:42.16 ID:BiyDrPqgo
レッスン室までの途中、窓越しに廊下に落とされた新緑の木々の影を見て、このみは太陽が傾き始めていることを知った。
木々の葉が海風で揺れる音に気がつき、しばらくの間このみは目を閉じて、それが心地よく耳を撫でるのを感じていた。
……のであったが、それも束の間だった。
なにやら聞こえてきた騒がしい声と、がらがらと何かが倒れるような物音に、その小さな音色はすぐさま掻き消されてしまった。
それらを少し聞いただけでも、曲がり角の向こう側の惨状が目に浮かんでくるようだった。
51: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/08/31(土) 00:33:08.69 ID:BiyDrPqgo
このみは息を吐いたあと、角を曲がりながら、いつものように何度目か分からない言葉を言う。
「こーら、そこのわんぱく娘たち!」
52: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/08/31(土) 00:34:31.52 ID:BiyDrPqgo
真美が今まさに投じたバレーボールは、4番と10番ピンだけを綺麗に残して、
向こう側で待機していた昴の手の中に吸い込まれていった。
「よっ、と。あ、このみもやらない?結構盛り上がるんだぜ、これ。」
53: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/08/31(土) 00:36:07.66 ID:BiyDrPqgo
「……別に、やるなーって話じゃなくてね。ただ廊下は人が通って危ないから、やるなら別の場所でやりましょ、ってこと。」
「このみん。別の場所って……。例えば、どこ?」
54: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/09/15(日) 22:41:35.32 ID:VqG4l+2oo
片付ける、と言ってもペットボトルとボールだけで、そんなに物が散らかっているわけでもない。
「あら、環ちゃん。一回で全部持ってきてくれたの。」
「くふふ、これくらいへっちゃらだぞ!」
55: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/09/15(日) 22:42:28.20 ID:VqG4l+2oo
「遊ぶなら、あまり騒がしくしないで、危なくないようにね。」
「むむ……騒がしくなくて……。」
56: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/09/15(日) 22:43:04.79 ID:VqG4l+2oo
「ど、どうしたの、二人とも……。」
「……このみん君。真美たちは気づいてしまったのだよ……。たった一つの真実に……!」
57: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/09/15(日) 22:44:57.65 ID:VqG4l+2oo
作戦会議が終わったところで、たくらみ顔をした真美がこのみのもとへぴょんぴょんと飛んできた。
「……このみん、ちょっと目をつむって?」
「目を?別にいいけど……。」
58: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/09/15(日) 22:46:14.58 ID:VqG4l+2oo
「手はこうして、こうだぞ!」
手の大きさからも、自身の手をつかんだのは環だとすぐにわかった。
59: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/09/15(日) 22:46:46.03 ID:VqG4l+2oo
自分の見ていない間にいったい何をしでかすつもりなのだろう。
例えばあれやこれだろうか、と想像していたこのみであったが、続く亜美からの指示は意外なものだった。
「そこから、数を数えてくの。いーち、にーい、さーん、って!」
60: ◆Kg/mN/l4wC1M
2019/09/15(日) 22:47:12.67 ID:VqG4l+2oo
このみがカウントを始めたところで、4人分の足音が左右へ遠ざかっていくのが聞こえてきた。
遠ざかっていく、というよりは小走りで、それも逃げているような……?
そこでようやくこのみは疑問の答えを見つけた。
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