228:(7) ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/11(木) 22:06:24.62 ID:E/BVepxA0
「……正直、本当に通用するのかは分からないけど……。出来ることは全部やってきたつもりよ。」
このみは、今までの日々を思い返すように、そう言った。
はじめは役の気持ちを掴む事もままならなかった。
役に近づこうとするたびに、霧の中に隠れてしまって、伸ばした手が空を切るような、そんな感覚があった。
「……でも、この子と私、なんだか似てるかも、って思ったことがあったの。それで、気づいたの。この子も物語の世界で『生きている』んだ、って。」
きっとこの子は、幸せになりたくて……。でも、それだけじゃなくて、胸を張って前を向いていたいって思う、そんな子なんだ。
このみは、胸の中だけで、そう言葉を続けた。
まるで古くから知る友人だったような、そんな確信めいたものがあった。
「だから……。今はこの子のこと、もっと分かってあげられるようになれたのかな、って思ってる。」
「……なんだか、すごく素敵ですね。」
「フフ、ありがと、春香ちゃん。」
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