179: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 21:56:54.25 ID:9DhA16vx0
もう一度だけ、手がぎゅっと強く握られた。
このみがそれに気がついて目を向けようとしたとき、また顔が下を向いてしまっていたのだと自覚した。
このみが顔を上げると、彼と目が合った。
「このみさんに、伝えたいことがあります。」
彼は、このみに気取られぬよう、震えそうな声を押し殺してそう言った。
芯の通った声だった。
束の間の静寂があった。
このみは、自身の鼓動が少しずつ早く、そして大きくなっていくのを感じていた。
それは、握られた左手越しに、彼に伝わってしまいそうなほどだった。
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