180: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 21:57:44.26 ID:9DhA16vx0
彼は小さく深呼吸してから、このみの目をじっと見つめたままで、口を開いた。
「……俺は、あなたのプロデューサーです。
あなたをトップアイドルにすることが、俺の夢です。
181: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 21:58:26.38 ID:9DhA16vx0
>>180 訂正
彼は小さく深呼吸してから、このみの目をじっと見つめたままで、口を開いた。
「……俺は、あなたのプロデューサーです。
182: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 21:59:43.74 ID:9DhA16vx0
夢──。
子どもだった頃は、たくさん夢があった。
テレビを見て影響されて、その度に何々になりたい、だなんて。
そうやって、いつも母に言いに行ったりしていたらしい。
183: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:00:24.25 ID:9DhA16vx0
周りのみんなが大人になっていくように、私も大人になった。
普通の人生のなかで、ささやかな幸せを見つけて。
そうやって生きていくものだと思っていた。
だから、大人になった私は、きっとあの日まで夢を見てこなかったんだと思う。
184: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:00:50.73 ID:9DhA16vx0
今振り返れば、アイドルになってから本当に色々なことがあった。
スパイのエージェントとして、迫りくる罠たちを、力を合わせて突破したこともあった。
「屋根裏の道化師」のときみたいに、演技で表現するような仕事も、最近は少しずつ増えてきた。
185: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:01:55.24 ID:9DhA16vx0
以前の自分では気づかなかったことが沢山あって、今の自分だから分かったことがある。
『私はひとりじゃない』。
186: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:02:46.13 ID:9DhA16vx0
不安を抱えたままこの世界に飛び込んで、たった一筋の光に出会えた日のことを今でも鮮明に覚えている。
輝いた舞台に立てるのならば、あの景色をもう一度見れるのならばと、どれだけ苦しくても諦めずにいられた。
少しずつでも進んでこられたのは、あの抱いた憧れが胸の中にあったからだった。
187: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:05:29.73 ID:9DhA16vx0
「──私に色んなものをくれた、大切な人たちに。
あなたに出会えて良かった、って伝えたい。」
「私が、『アイドル』馬場このみとして最高に輝く姿を見てほしい。
188: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:07:04.45 ID:9DhA16vx0
彼は、このみの手を握っていた両手を、そっと離した。
その表情は、先ほどよりもずっと落ち着いていた。
「……俺なんかよりも、このみさんの方が人生経験はずっと多いと思います。
189: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:07:47.53 ID:9DhA16vx0
彼の言葉を咀嚼しながら、このみは考えていた。
このみは経験から分かっていた。
自身のそういう性質、この『悪い癖』は、一生付き合っていかなければならないものだと。
ある程度は変わることはできても、それ自体を無くすことは出来ないだろう、と。
190: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/05/08(金) 22:09:15.88 ID:9DhA16vx0
「だから、このみさんがアイドルを辞めるときは、
きっとここじゃ叶えられない願いを見つけたときなんだと思います。
でも、その願いもきっと、みんな応援してくれます。
それは、大切な人の──あなたの夢だから。」
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