142: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/02/09(日) 16:52:38.25 ID:lT49CYaR0
しかし、彼女の「美しさ」はそうではないのだと、このみは知っていた。
まだ何色にも染まっていない澄み渡るような透明さは、いつの間に誰かの心を自然と惹きつけていて、愛おしささえ感じさせる。
そんな飾らないありのままの彼女が、このみには少し羨ましくもあった。
そして、このみもまた、彼女には笑っていてほしいなと感じていた。
昴が琴葉の顔を覗こうとするたびに、琴葉は悪戯っぽく他所の方を見て顔を合わせないようにする。
暖かい目でそんな二人を眺めているこのみに気が付いた昴が、戸惑った様子でこのみに尋ねた。
「このみ。オレ、そんな変なこと言ったのかな……。」
にわかに心配そうに昴からそう言われ、このみは少し驚いた。
何を言うべきか迷ったが、このみはまず一番に、打算や計算なしに何気無く相手に踏み込んでものを言えてしまう昴がなんだかずるいなあ、と思わされた。
このみは、ふふ、と少し笑って、呟くように答えた。
「……そういうところよね。きっと。」
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