1:名無しNIPPER
2019/06/11(火) 12:26:02.67 ID:8Kxlpx7EO
「どういう自分になりたい?」
きっかけは、気まぐれの一言だった。いや、彼女はわざとこんなことをいったんだろうか。
幼年期の、少しだけ分別が付き始めた頃。
アリの死骸を見つけたら、悲しくなるということをわかり始めた頃。
相手が嫌な気もちだと、自分も嫌な気持ちになるんだと、気づき始めた頃。
当時、僕らはまだ、七歳だった。
「すごいひとになりたい」
すごいひと。漠然とした、子供のふわふわした思考。
子供の頃、世界はもっと狭いと思っていて、周りが幸せなら、世界全体は幸福だと思っていて。
不可能なことはなかった。世界とは、自分のもので、自分そのものだった。
――願えば、なんでも叶うと、思っていた。
SSWiki : ss.vip2ch.com
2:名無しNIPPER[sage saga]
2019/06/11(火) 12:28:02.87 ID:8Kxlpx7EO
「どんなすごいひとになりたい?」
僕よりほんの少し、具体的な考え方。ふわふわを、ほんの少しハッキリとさせる思考法。
思えば、子供のわりに、彼女は大人なびていた気がする。
3:名無しNIPPER[sage saga]
2019/06/11(火) 12:28:41.79 ID:8Kxlpx7EO
◇
「いいことをするのは本当にいいことなの?」
「どうしたの急に」
4:名無しNIPPER[sage]
2019/06/11(火) 12:29:39.14 ID:8Kxlpx7EO
「なるほどねー」
「こっからもいろいろ考えたよ。これが現実的に当てはまらない時も多いしさ」
そうやって、少しづづ砕いていって。少しずつ、答えを出していった。
5:名無しNIPPER
2019/06/11(火) 12:30:37.90 ID:8Kxlpx7EO
「どうしたの?」
「なんでもないよ」
彼女は笑っている。悩みなんて無さそうに、辛いことなんてまるでないかのように。
6:名無しNIPPER
2019/06/11(火) 12:31:39.91 ID:8Kxlpx7EO
数日後。
僕は彼女が苦しんでいるのに気付いた。最初、彼女は認めようとはしなかった。でも、隠し通せるものでもなかった。
――もっと自分に能力があればよかったのに。
7:名無しNIPPER
2019/06/11(火) 12:32:10.27 ID:8Kxlpx7EO
「どうすればよかったのかなあ。ふふふ」
「……」
「キミは私が間違ってたと思う?」
8:名無しNIPPER[sage]
2019/06/11(火) 12:32:42.37 ID:8Kxlpx7EO
彼女は、何も言えなくなった。
僕の言い方は、卑怯にも思える。でも、必要な言葉だ。
だから。
9:名無しNIPPER[sage]
2019/06/11(火) 12:33:13.12 ID:8Kxlpx7EO
「……ありがとう?」
「どういたしまして」
「……混乱してきた」
12Res/14.87 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20