6:名無しNIPPER
2019/06/11(火) 12:31:39.91 ID:8Kxlpx7EO
数日後。
僕は彼女が苦しんでいるのに気付いた。最初、彼女は認めようとはしなかった。でも、隠し通せるものでもなかった。
――もっと自分に能力があればよかったのに。
そうすれば、彼女がこんなにも傷つくことはなかった。
颯爽と登場し、ヒーローは仮面を被り、彼女の問題を裏から解決する。そうであればよかったのに。
彼女は泣いていた。
僕は正面から問題を問い詰めた。現実は、そういう手段しか取れなかった。
……彼女はいじめられていた。
「私は、弱いね」
「……」
「最後まで隠そうと思ってたのに、嘘をつくからには結果が全てなのに」
自身の弱み。それをさらけ出すというのは、随分とプライドを傷つける。相手と対等でありたいと思うなら、わざわざ弱みをみせる、なんてことは、避けたいに決まってる。誰だってそうだ。
自分をしっかりと持ち、正しく生きたいと願い、正しくあろうとした彼女は、周囲から疎まれた。ポイ捨てを注意する。他人のいじめを止めようとする。
それ自体は、正しい行動だ。だが鼻につく。何様なんだと疎まれる。
彼女は正しかった。間違っているは世界のほうだった。だが、世界とは、現実のあり方というのは、そういうものだった。
「私はね、自分が正しいって思ってた」
善意の押し付けは独善行為だ。それはとっくに彼女と話し合ったことで、そういうことはしないと互いに決めていた。
「私は失敗したんだよ」
もともと、彼女は押しつけ善意の独善者だったのだ。それは間違っていると、途中で気づいて止めた。でも、周囲の目には、いったんついた印象は、彼女をそういうやつと見る。
処世術、対人関係の基本。
最初に間違えた彼女は、次が正しくても色眼鏡を通してみられる。
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