22: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:27:44.67 ID:kcSV+mvpO
「この年になって遊具を使うとはなぁ」
「んはははっ! ええやん、何か哀愁感じるよ?」
23: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:28:14.74 ID:kcSV+mvpO
しばらくの間ゆらゆらとブランコを漕いでいた周子はぴたりと止まり、口を開いた。
「大人になるとさぁ、出来なくなることが増えるよねー」
24: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:28:51.89 ID:kcSV+mvpO
「それも少しは増えるけどさ。ほら、お酒飲めるのも、大人だからこそ出来ることだもんね」
「そうだな」
25: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:29:32.48 ID:kcSV+mvpO
そこまで言って、また周子はゆらゆらとブランコを揺らし始めた。
あれは何年前になるだろう。大人と子供の境の頃、俺自身も同じように抱えた得体の知れないやるせなさ。
そんなかつての感情が、周子の言葉と重なった。
26: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:30:14.33 ID:kcSV+mvpO
「夜中にブランコ乗るとか、公園でだらだらアイス食べるとかさ……」
「えっ?」
27: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:30:53.65 ID:kcSV+mvpO
「──けど少なくとも、それが出来る今の間は。いくらでも付き合うからさ」
そこで言葉を切って、周子の返事を聞かないままブランコを漕いだ。
28: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:31:28.11 ID:kcSV+mvpO
── 夏 ──
その日、俺はアンタレスを眺める余裕さえなかった。
29: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:32:04.26 ID:kcSV+mvpO
「この阿呆。アイドルが歩けなくなるまで飲むなっての」
背中にずっしりとした重さを感じながら俺も唸る。
30: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:32:52.98 ID:kcSV+mvpO
うわぁぁ、と喚くように周子は手足をじたばたさせる。
頼むから暴れないでくれ。ただでさえ妙なところを触らないよう、気を付けておぶっているんだから。
31: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:33:21.82 ID:kcSV+mvpO
そうやってじゃれ付いていた周子が、ぴたりと動きを止めて黙り込んだ。俺は慌てて訊ねる。
「……もしもし周子さん? どうした、気持ち悪い?」
32: ◆RZFwc/0Dpg[sage saga]
2019/05/31(金) 22:34:19.48 ID:kcSV+mvpO
「わははははっ! たのしーーーっ!」
馬鹿笑いをしながら周子は揺れていた。120度近い弧を描くほど力一杯、ブランコを漕いでいる。真夜中に全力で遊具を使う女。傍目で見ると中々異様な光景だ。
70Res/34.80 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20