ダイヤ「それは押し花の様に」
1- 20
7:名無しNIPPER
2019/05/25(土) 23:40:58.91 ID:9lPtmwgdO
この先の長浜のバス停で降りるつもりであったから、手に握っていた硬貨は、予定より70円多く残っていました

バスが音を立てて走り去り、この先の道を更に南下していく。

そこにあった物は、何も変わらなかった。

コンクリートに煌々と照り付ける陽の匂い。私の腰近くまである髪をさらり、と撫でて過ぎ去っていく潮風。道の脇に無造作に存在する、萌えた草の匂い

目に見えるもの、肌に感じるもの。その全てに既視感のようなものを感じます


ともに降りた乗客は、既にマリンパークの方に向かっており、ここには居ない

私は、周りに誰もいないことをもう一度確認して、ぎゅっと、目を閉じる

海の音、風のささやき、土の匂い。五感全てが夏模様

頭の中に思い浮かべるのは、郷愁の潮騒

「ふふっ…………」パチッ

目を開ければ別世界、そう思うことにしました。目に見えるものすべてが、今ここにあるのに、懐かしい

年相応の落ち着いた色のワンピースは、色が眩しい制服へと変身していました。緑のネクタイを気持ちきつく結び、襟を一直線になるように整え、視線を上向きに直して歩き出します

余所行き様の革の鞄はスクールバックになりました。丁寧に扱っていたつもりですがやはり三年も使っていると少し、傷が目立っていました

体が潮風が通り抜けてしまう程、綺麗に感じました。一歩進めば、風になって飛んで行ってしまえそうな程、心も気持ちも軽やかです



気分は既に、タイムトラベラーです。十年前の世界に、私は確かに、足を踏み入れました。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
18Res/12.56 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice