78:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:34:59.52 ID:YWfCY9A20
それから教師の声は聞き流しつつ、沙綾はぼんやりと思索に耽る。
もしもの話、私がこちらの世界の沙綾だったら。前にも考えたことだ。
私と同じで、こっちの沙綾は昔にポピパと別のバンドを組んでいた。けれど、トラブルが重なって、それも解散した。そして自分よりも家族を、実家の仕事のことを優先するようになった。そうしているうちにカスミちゃんたちと出会い、詳しい経緯は知らないけれど、またバンドをするようになった。
私ならどうだろう。香澄たちと出会って、ポピパに入ったばかりの私なら。
暗い校舎。ひとりの教室。他界した母。
明るい校舎。にぎやかな教室。いつも優しく笑っている母。
一度倒れたことがある、お店をひとりで切り盛りする父。まだ幼稚園に通う幼い弟たち。
いつもしっかりしていて、家族をまとめてくれる父。幼いながら、お店の手伝いをしてくれる弟と妹。
改めて考えてみると、やっぱり境遇の重たさが段違いだ。私がこっちの沙綾の境遇だったら……
「……戻りたくなくなる、かもね」
呟いた言葉に込められた感情は、同情とか憐憫とかと呼ばれるもの。沙綾自身が元々いた世界だから、という贔屓目はあるかもしれないけれど、こちらかあちらかを選べ、なんて言われたら、沙綾はきっとあちらを選ぶだろう。
189Res/213.78 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20