77:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:34:26.64 ID:YWfCY9A20
「何か悩んでるんだと思うんだ」
この前の日曜日、いつものようにアリサの蔵に集まったみんなに、沙綾はそう言った。
「どうして分かるのよ?」
「ちょっと前の私がそうだったから」
怪訝そうなアリサに、苦笑いを浮かべながら返事をしたことを脳裏に呼び起こす。
「沙綾ちゃん、何に悩んでるのかな……」
「ごめん、それはちょっと……分からないんだ」
目を伏せて、心の底から心配そうな小さい声で呟いたカスミに、申し訳ない気持ちで言葉を返したことも思い出す。
入れ替わったもうひとりの自分が何を悩んでいるのか。メッセージが途絶えてから考えていたけど、まだ分からない。
はぁ、と沙綾は小さく息を吐き出して、窓の外へ視線を移す。夜空は重たい鉛のような雲で覆われていた。
(私がこっちの沙綾だったら……どうだろうなぁ)
そうしていると教師が教室に入ってきて、授業が始まる。現代文の教科書をパラパラとめくって指定されたページを開き、沙綾自身が書いたメッセージの上に置いた。
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