55:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:15:20.37 ID:YWfCY9A20
◆
沙綾がその異変に気付いたのは、入れ替わってから一週間ほど過ぎたある日だった。
明るい学校にも、賑やかな教室にも、やまぶきベーカリーという響きにも慣れはじめたころ。花咲川に沿って歩き、学校までやってきて、だんだん顔を覚え始めたクラスメートと簡単な挨拶を交わして自分の席につく。それから机の上に目をやると、そこには何か文字が書き込まれていた。
今は香澄ちゃんと同じ机を共有してるわけじゃないのに、誰かが悪戯でもしたのかな。
「……え?」
しかしその落書きをジッと見つめると、それがとても見慣れた文字であることにすぐ気が付いた。
猫が尻尾を丸めたような、少し丸っこい可愛い文字。それは、あの寂しい教室で何度も何度もやり取りをした、他でもない香澄の文字だった。
もしかして、と沙綾の頭にはひとつの可能性が思い浮かぶ。
フツーに考えたら有り得ないことだけど、ジョーシキではまったく通用しないことだけど、そんなことを言ったら今自分が置かれている状況の方がよっぽど非常識で作り物めいている。
だから彼女は『困ったことがあったらすぐに相談してね』という見慣れた親友の文字の隣に、自分たちの始まりになった文字を書き込んだ。
ねえ、聞こえる?
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