144:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:25:09.28 ID:YWfCY9A20
10
気が付くと彼女は電車の長椅子に座っていた。
ガタンゴトンと、車両がレールのつなぎ目を超える音。それ以外に音はしない。窓の外からは眩いばかりの白い光が射しこんできていた。そのせいで外の風景は見えない。
視線を左右に巡らせる。車内には彼女の他に人の姿がない。
ガタンゴトン。
幾度目かのその音を耳にしながら、彼女は考える。はて、どうして私は電車に乗っているんだろうか。
学校へ行くため? いや、学校へは電車は使わない。
じゃあどこかへ出かけるため? いや、そんな用事があっただろうか。
そもそも、自分はいつ、どうやってこの電車に乗ったのか。それをまるで覚えていない。
人のいない車両。まるでこの車内だけで世界が切り取られてしまったかのような空間。
ふと、彼女は自分の対面の長椅子に人影が現れたことに気付く。
そして、これが夢であって、夢じゃないことにも気が付いた。
その対面にいるのは――きっと自分だ。
窓からの眩い光が弱くなっていって、逆光の影が薄くなる。お互いの姿が見えるようになると、思った通り、そこには見慣れているけどちょっとだけ懐かしく感じる沙綾自身の顔があった。
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