132:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:15:35.68 ID:YWfCY9A20
それは、みんなにとっての山吹沙綾をこの世界に返すこと。
なんだかおかしな響きだな、と思って、沙綾はちょっとだけ笑う。それから夜空に目を移すと、一筋の流星が光を放った。
「この時期だと、しし座流星群の一部なのかな」
流星を目で追いながら、沙綾は言う。
「みんなで願いごとしよ!」
カスミがキラキラと瞳を輝かせて、みんなも頷く。そして目を閉じて、夜空に願いをかける。沙綾も同じように願う。
どうかこの優しいみんなのもとに……この世界の沙綾を戻してあげられますように。
願いなんていう、曖昧模糊で、形のない朧げなもの。だけどどうだろうか。それは確かな形を持って、沙綾の中に生まれたような感覚をおぼえる。
そしてただ漠然とだけど、この世界のみんなとともに過ごす時間はこれが最後なのかもしれないな、と思った。
「どうかしたの?」
夜空に願いを捧げ終わってから、カスミにそう尋ねられた。一抹の寂しさを感じて、もしかしたら沈んだ顔をしていたのかもしれない。
そんな沙綾のことをいつも心配してくれていた、くりくりとした瞳。
「ううん。ただ……みんなに感謝を伝えなくちゃって思って」
その瞳にそう返して、改めて、沙綾はみんなに向かって「ありがとう」と言った。
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