47:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:35:21.19 ID:ERzHuNUU0
「智代子さんは……誰に恋をしていらっしゃるのでしょう」
「誰に……」
凛世ちゃんの突然の問いかけに戸惑いながらも私は考える。
48:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:35:57.63 ID:ERzHuNUU0
「私を見つけてくれた人……かな。優しくて頼りになる人。私に真剣にアイドルに恋をさせてくれた人」
ずるいだろうけど、みんなの答えを引用しちゃうね。でも、私の答えとほぼ一緒なんだから、いいよね。
そして次からの言葉は、私自身の答え。
49:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:36:31.24 ID:ERzHuNUU0
凛世ちゃんは、私の告白を聞いても表情は動いていないように見える。むしろ喜んでいるように見えた。瞳が先ほどより大きくなっていた。赤く夕焼けのように優しく瞬いている瞳は私の見ている景色さえも夕日のように赤く染めている気がした。
「凛世は……嬉しく思います」
「嬉しい、ってなんで?」
50:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:37:13.29 ID:ERzHuNUU0
凛世ちゃんは胸に手を当て、夕日を閉じた。どんな感情なんだろう、どんなことを考えているのだろう。わからないけど、知りたいと思っている私がいる。
そして、分かったことがある。
凛世ちゃんにとって恋は不安なものなんだ。今までは分からなくて、自分なりに手探りで、でも本当にそうなのか不安で。
51:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:37:46.81 ID:ERzHuNUU0
でも今凛世ちゃんの言葉を、感情を、優しさを。それらを聞いて私も好きでいいんだ、好きでいていいんだ、って思って心が晴れた。眩しい太陽が雲の切れ間から覗き始めたようにぽかぽかとチョコの牢獄を溶かす。
「凛世ちゃんありがとう」
私は私自身の言葉で恋を紡げるような気がする。
52:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:38:25.23 ID:ERzHuNUU0
紡ごう。私の言葉で。唱えよう。私の恋を。
チョコレートのように甘い恋をしてみたい。私の甘い欲望をみんなに、そしてーーに伝えたい。
たとえ夏葉ちゃんみたく堂々とできなくとも。
53:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:38:53.06 ID:ERzHuNUU0
◆◆◆
オーディションの日には、いつもプロデューサーさんがいてくれる。
「準備は大丈夫そうだな。智代子ならできるからな」
54:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:39:33.96 ID:ERzHuNUU0
「プロデューサーさん、少しお願いがあります」
「……? どうしたんだ、急に改まって」
ドキドキが止まらない。顔が熱い。全身の血液が燃えたぎっているよう。
55:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:40:08.88 ID:ERzHuNUU0
私の言葉に、少し目が泳いだ気がする。表面上は動揺していないけど、少し驚いているみたい。
「……一応、理由を聞こうか」
「いやー、あのー……別に無理にとは言いませんけど……あ、そうだ! ルーティーンですよルーティーン! 一流のスポーツ選手はそういうの大事にしてるじゃないですか!」
56:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:40:44.34 ID:ERzHuNUU0
「ま、いいよ。ほら、自由にしたらいい」
プロデューサーさんは私と同じように両腕を前方へ広げた。思わぬ返答に私はドギマギした。
でも本人がそういうなら……!
57:名無しNIPPER
2019/05/24(金) 22:41:12.58 ID:ERzHuNUU0
私の恋は、思った以上にワガママだ。
「オーディション、不安なんだよな」
そうじゃないけど、そういうことにしておこう。それが一番都合がいいから。
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