一ノ瀬志希「ほころび」
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88:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 00:42:56.74 ID:SYS+AFC90
 小学校に行っても、夕美ちゃんの姿は無かった。

 ただ、年配の先生がちょうど捕まったおかげで、話を聞くことができた。
 夕美ちゃんのこともよく知っているみたいだ。

「えぇ、そこの花壇もそうですが……夕美ちゃんは、その先生の葬式でも世話役を買って出てくれましたね。
 会場の準備とか、当日の受付とか、参列者へのお茶汲みといった雑務だけでなく、祭壇に備える花まで、一部ですが、あの子が用意してくれたんです」

「花を?」

 驚くプロデューサーの横で、あたしは夕美ちゃんの収納にあった花々を思い出した。
 あれは、この日のためのものだったんだ。

 葬式が行われた日は、ライブイベントの当日だった。

「まるで用意していたみたいで、心苦しいと彼女は言っていたのですが、ご親族は大層喜んでおられました。
 花の師匠である先生に、お礼と哀悼の意を示すには、やはり花しかないって、あの子はずっと考えていたようですね」

「そうだったんですか……」


 話によると、夕美ちゃんは東京に戻ると言っていたらしい。

 だけど、あの部屋はもう引き払われている。
 彼女は一体、どこに行くというのだろう――。



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