87:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 00:36:15.04 ID:SYS+AFC90
一緒に怒ってくれるかと思ったら、先生に裏切られちゃったわ、なんて、お母さんは冗談ぽく笑った。
とても楽しそうに、彼女は言葉を続ける。
「それからというもの、夕美はいつも先生を家に招いて、夢中で庭いじりをするんです。
ねぇ、この子はどこに植えたらいいの? 肥料をたくさんあげたら元気になる? ちょっとこの子は剪定しすぎちゃった? なんて、泥だらけになりながら先生に聞くんです。
先生も、ご迷惑なんじゃないかと思ったのだけど、嫌な顔一つせず、いつも親身にあの子に付き合ってくれて……卒業してからも、よくお越しくださっていたんです」
ふと、お花の世話をする夕美ちゃんの姿を思い出した。
頻繁に自分の鉢植えを彼女の部屋に持って行った時のあたしと夕美ちゃんが、今のお母さんの話にあった、幼き頃の夕美ちゃんと先生の姿と重なる――。
「おかげで、最初は一角だけだったあの子の花壇が、それこそアサガオのように、どんどん庭を占領していって、ふふふ……
でも、先生は本当に、あの子によくしてくださいました……」
鼻を啜る音が、リビングに小さく響いた。
夕美ちゃんのお母さんは、泣いていた。
「ちょうど、先生のお葬式がこの間、あったもので……」
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