108:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 01:52:39.38 ID:SYS+AFC90
夕美ちゃんの声は、あたしの乱暴で不細工な声とは違って、どこまでも穏やかだった。
「オーディションもいっぱい落ちて、だけどプロデューサーさんと一緒に、何度も励まし合いながらお互いに頑張って、それでも一向に芽を出せなくて……
そんな時に、志希ちゃんのパートナーとしてスカウトされたあたしが、あっさりステージに立っちゃった。
自分に容姿が似ている子が……大して違いもしないのに」
「情状酌量とでも言いたいの?」
全くのナンセンスだよそんなの非合理的で実にニホンジン的っ。
斟酌すべき事情があれば悪いことをしていいなんて理屈が通るはずがない。
一つの事象には一つの結果。罪には罰だ。許す理由がどこにあるだろう。
「志希ちゃん……少しだけ、私の話、聞いてもらってもいいかな?」
自分の隣の芝生をポンポンと叩いて、夕美ちゃんはあたしを見つめた。
「私が、ここに来た理由」
――――。
黙って、夕美ちゃんに従い、あたしはそこに並んで座った。
「ここに初めて来たのは、小学校の時だったの」
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