4: ◆XUWJiU1Fxs
2019/04/25(木) 00:11:31.49 ID:cgXM4cARO
言い切ってしまえば、ゆかりは伸び悩んでいた。これまで仕事にも恵まれてきて彼女の努力もあり、順風満帆とまではいかなくてもそれなりに結果を出してきた。
新人アイドルとしてはよくやっている、と評価されるだろう。しかしここに来て結果が伴わなくなって来た。まるでゲームのキャラクターのステータスが限界を迎えて
レベルを上げても伸びないように、ゆかりは高い壁にぶち当たってしまったのだ。
程度はどうであれ。スランプは誰にでもあることだし、いつかはよくなる、と言えたのならば簡単な話だけど俺はその言葉を使いたくなかった。いや、正確には使えなかった、
と言うべきだろうか。分かっているのに何もできない俺を尻目にゆかりもなんとかしようとレッスンを繰り返すがどうしても焦りを隠せずにいた。
今日のオーディションだってゆかりの希望で受けたものだ。それだけに気合が入っていたし、俺もそれに応えるべく最善を尽くして来た。だけどそれでも、未だに暗いトンネルは抜けることができずにいた。
「……」
ゆかりは雨が叩く窓の外を物憂げに見ている。その目の先に、光はあるのだろうか。鬱陶しい雨を振り払うようにワイパーは左右に動く。
これくらい手軽に、悩みもスランプも消すことができれば話は簡単なのにな。
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