水本ゆかり「維納に奏でる」
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25: ◆XUWJiU1Fxs
2019/04/25(木) 00:45:28.09 ID:cgXM4cARO
「ダンケシェーン!」

 30分ほどのオルガンコンサートは万雷の拍手の中、幕を閉じた。コンサート自体は無料らしいがオルガンの維持やオルガニストへの寄付は行われているらしい。良いものを聞かせてもらったと財布から10ユーロを寄付して講堂から出ようとしたその時だった。

「待ってくださーい!」

 不意に俺たちを呼ぶ声が講堂に響いた。静けさを切り裂くその声に周囲の注目が集まった。

「貴方達、日本人ですよね? 今日は私のステージにきてくれてありがとうございました♪」

 クリーム色が混じったようなミントグリーンの髪の少女が嬉しそうにやってくる。その人目を集める髪の色は間違いなく先ほどオルガンを弾いていた子だった。どことなくゆかりに似て清楚な印象を与えるが、
幼子のような屈託のない笑みを浮かべており始めてあったはずなのに長い付き合いのある子のような思えたほどだ。

「素晴らしい演奏だったよ」

「褒めてもらえるなんて嬉しいです! ここで弾くのは夢だったから緊張しちゃって……あっ、もしかして貴女が持ってるそれってフルートですか?」

「は、はい。そうですけど……」

 少女はゆかりが持っているフルートのケースに興味を示す。

「少し貸してもらっても良いですか? あ、もちろん外で吹きますので!」

 少女に促されるように教会をでてグラーベンの通りに出る。歩行者天国になっているこの通りでは大道芸人があちこちでパフォーマンスをしており、
道端で日本人がいきなりフルートを吹いたとしても誰もおかしくは思わないだろう。少女は慣れた手つきでフルートを組み立てていき、持っていたチューナーで軽く音程を合わすとおもむろに吹き始める。


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