23: ◆XUWJiU1Fxs
2019/04/25(木) 00:42:40.37 ID:cgXM4cARO
馬車に乗りながら室内音楽を楽しむという贅沢をしているうちに、フィアカーははじめのペーター教会前に到着していた。
「アリガト、ゴザイマー」
カタコトでも日本語で話してくれるのは嬉しかった。少し多めに御者さんにチップを渡して俺たちは教会の中に入った。外から見る以上に開放感があり、
美しくも格調高い内装は圧巻で言葉を失ってしまう。もしかしたら海外旅行者が奈良の大仏を見た時、俺たちと同じ感想を抱くのだろうか。
「プロデューサーさん。日本語のパンフレットもありますよ」
ゆかりが持って来たピンク色のパンフレットに軽く目を通す。俺たちが入って来た正面入り口から卵とも小判とも形容できる講堂を中心にそれぞれの祭壇へと繋がっているらしい。
なんとなくイメージしていた燭台で照らされる長い廊下はこの教会にはないようだ。天を仰ぐと長い歴史を感じさせるフレスコ画の天使たちが俺たちを見守っている。
「見てください。パイプオルガンです」
奥まで行くと祭壇の上に見たことがないほど大きな黄金のパイプオルガンが窓ガラスから射す光を浴びて神々しくそびえ立っていた。
「あれを弾けたなら気分いいだろうな……」
世界中の風を吸い込んでしまいそうなそれが奏でる音に想いを馳せる。たった一音、指で鍵盤を押すだけで世界すら支配できるだろう神の楽器。
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