5: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:19:26.83 ID:mXNAEsvV0
「……そんな事、歌の良し悪しには関係ないんじゃありませんか?」
そうしてある日の事である。
6: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:21:03.25 ID:mXNAEsvV0
「だからちょっとした実験をしてみようよ。実はここに、昨日出来たばかりの君の歌声の入ったCDがあります」
言って、僕はデスクに置いてあったCDの詰め合わせを見せる。
7: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:21:43.94 ID:mXNAEsvV0
「それから、これは春香君の分」
続いて僕は、この場に呼び出していたもう一人、春香にもCDを差し出した。
8: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:22:39.16 ID:mXNAEsvV0
===
アイドルが行う路上ライブ、と書けば随分聞こえは良さそうだが、
実際は立ち止まる気配も稀な通行人に延々アプローチを続ける作業である。
9: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:23:48.60 ID:mXNAEsvV0
「千早ちゃん……って、やっぱり凄いですね」
路上販売を始めて十数分、僕の隣では並べかけのCDを持った春香が固まっていた。
10: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:25:37.69 ID:mXNAEsvV0
……逆に春香が歌う番になると、これが見事なまでに人の流れを留めることが出来なかった。
なぜなら彼女の歌唱力は、良くても一応聞けるかな? 程度の実に平凡レベルな代物であり、
むしろこれが本来の駆け出しアイドルの路上販売、その実態であると僕に見せつけているようでもあった。
11: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:26:04.48 ID:mXNAEsvV0
とはいえ、応援しても二人の実力差は歴戦。
だが数時間後、「潮時だな」と撤収を決めた僕に喰ってかかったのは千早の方だ。
12: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:27:41.87 ID:mXNAEsvV0
「ご覧、今の自分の顔を」
言われた彼女が押し黙る。
13: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:28:57.53 ID:mXNAEsvV0
「今日、君は春香君に負けた。売り上げの数もそうであるし……
何よりも君は、自分に興味を持ってくれた相手に一度でも笑顔を見せてあげれたのかい?」
「それは……! それは、できてません……けど――」
14: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:30:27.30 ID:mXNAEsvV0
「でも、そんなこと、言われたって……」
千早が自分の腕を抱く。
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