26:名無しNIPPER[saga]
2019/02/20(水) 21:36:37.68 ID:vutjDZzWo
――――――
「あなたが思いつきで突拍子もなくあんな事をするなど予想してもいませんでした」
「……私もだ」
我ながらなぜあんな莫迦なことをしてしまったのかと、量販店からの帰りの道中うなだれっぱなした。
反対にワッキー氏は満足感に充ちた足取りで私の一歩先を軽やかに歩いていく。
「でもそれだけ、ハスミンにお熱ということでしょう? きっとその思いは本人にも伝わりますぞ。 いつかね」
「その前に、イベント出禁になったりはしないだろうか……」
「存外小心者ですな。 そんなことでは出禁になどなりませんよ」
「そういうものか? 昔はもっと厳しかった気がするなぁ……」
そのように今昔を比べて考えてみるたび、先ほど会った長富蓮実のことがやはり気にかかった。
もっとも『会った』とも言いがたい。顔をまじまじと見つめたのもほんの数秒で、目に焼き付けようと決めていた彼女の像もいまや夢うつつである。
喋ってすらいなかったので声も聞いていないし、バックダンサーとして参加したといっても……
正直、ステージは暗くてスポットライトは主役の3人にしか当たらなかったものだから……
言ってしまえば私は結局、長富蓮実をほとんど知ることすら叶わなかったということだ。
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