9:名無しNIPPER[saga]
2019/02/08(金) 22:20:59.20 ID:441QTGT20
「でも、プロデューサーは私を、アイドルの道へとスカウトしたんですよね」
楓さんはニコリと微笑んで、ゆっくりと首を振り、店員を呼んだ。
「まだ大丈夫ですよ」
店員に注文した銘柄は、実に意味深だった。
俺と楓さんが出会った時、彼女が飲んでいたものだ。
「思い出しますね──すっかり酩酊していたけど、週の初めだったから、よく覚えています」
「私にとっても、月曜日は飲まんでいい日だったんですけどね。ふふっ、でも──
そういうプロデューサーも?」
「まぁね」
あの日は、俺も荒れていた。
先方のディレクターに当時の担当アイドルをコケにされて、何も言い返すこともできず、挙げ句、そのアイドルに逆に励まされた。
「俺は何のためにいるんだ、って──
どうせなら、今日はとことん腐ってやろうって、開き直って酒を煽って、ふと横を見たら、それは強烈でしたよ。
こんな美人が一人で銀杏を肴に飲んでるんだから」
「お上手ですね」
あの日と同じ台詞で、事も無げにサラリと返してみせる楓さんに、少しムッとしてしまう。
どうやら今日も、彼女のペースだ。
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