13:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:05:42.90 ID:M4jexkrI0
発車します、というのんびりとした初老の男性運転手の声。ドアが閉まる音。車内の人々のささめき合い。それらに何ともないように混ざっている私。
こうしていると、自分も普通の人間なんだなと思っていつも安心した。
理解が及ばない、何を考えているのか分からない……というような評価を貰うことが多いこれまでの人生であったけれど、私も普通の人なんだと世界から認められたような気持ちになれて、少しだけ救われた様な気持ちになった。
車窓に流れる見慣れた街は、至るところが白い雪化粧をまとっている。それだけでどこか別の遠い街にやってきたような気分になって、東京を離れてから三年も経つのか、なんていう感傷が胸に去来する。
勇気を出してこの白い街を見下ろしてみようか。
そんなことを思って、降車ボタンを押して、国際センター前というバス停でバスを降りる。それから少し歩いて、近くの城址公園に足を踏み入れた。
ここは市内でも有数の観光スポットだけど、私はこの街に住み始めてからこの場所に足を運んだことはなかった。理由は分かっているけれど分からない振りをした。高いところが苦手なんだろう、きっと……と、そう思うことにした。
わずかに雪の積もった砂利道を踏みしめて、本丸を目指して歩く。
公園内は想像以上に人が少ない。こんな日にこんな場所まで足を運ばないのが普通の人間か、だとしたらやっぱり私はどこかおかしいのかな。そんなどうしようもないことを考えながら、ただ歩く。博物館のある三の丸跡を通り過ぎて、やがて本丸跡に辿り着いた。
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