勇者「彼は正しく英雄だった」
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421:名無しNIPPER[saga]
2019/02/07(木) 23:54:21.62 ID:ltwtokG1O

その相手こそが亡国の傭兵。

拭えぬ怖れを刻み付けた男、国を滅ぼされて尚も戦おうとした不屈の男、王に傷を付けた唯一の存在。

やがて終戦を迎え、故郷の安全と引き替えに従えた後は、幾度となく亡き者にしようとした。

不可能と言える暗殺を命じ、ある時は特級と呼ばれる魔物の単独討伐を命じた。

だが死ななかった。そのどれもを成功させ、あろうことか信頼を勝ち取ってみせた。

最も怖れ、消し去りたい存在。それでいて臣下の誰よりも強く、頼りになる存在。

信頼と恐怖、羨望と嫉妬、怒り、憎しみ、複雑に絡む感情が、王を狂わせた。

そして今尚、それは王を縛り続けている。

(そうだ。彼奴と同じ目をしている。これは、私を脅かす者の目だ)

「どうした、亡霊でも見えたのか」

その言葉に、国王は我を忘れた。

「貴様など怖れはしない。怖れるものか、私は王だ。敵などいない。いるはずがない」



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