370:名無しNIPPER[saga]
2019/02/03(日) 23:07:27.51 ID:IrdoZQX9O
一方の傭兵には傷一つなく、巨大な岩の上から悠然と勇者を見下ろしている。
ほんの一瞬、何処か遠くを見るように目を細めたが、すぐに視線を戻した。
その表情は冷酷で無慈悲。一見すると心ない人形であるかのように見えるが、瞳の奥には窺い知れない何かがある。
そんな彼を見上げる勇者の姿は、父に突き放された息子のようであった。
悔しさ、歯痒さ、苛立ち、悲しみ、様々な感情が綯い交ぜになって表れている。
その姿は父である国王と決別した時以上に苦悩し、打ち拉がれているようにも見えた。
(師よ、教えて下さい……こうなった理由、戦う意味を……でなければ、俺は……)
父と気軽に話すことの出来なかった彼にとって、傭兵はかけがえのない存在だった。
幼い頃から剣術の師として傍におり、おそらく、父である国王よりも多くの言葉を交わしただろう。
幼かった彼は、父にはない気軽さで接してくれる傭兵を大いに慕った。
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