勇者「彼は正しく英雄だった」
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359:名無しNIPPER[saga]
2019/01/27(日) 01:59:23.57 ID:8oN8VcFcO

彼女がいるなど信じたくはなかった。

しかし彼は、彼女もこの地獄に囚われ、血肉と骨の海で藻掻いていることを確信した。

(あの声はきっと助けを求めているに違いない)

彼には満足な防具も武器もないが、医療箱ならあった。

中には万が一彼女が傷を負った時の為に作った物が入っている。監視所で日夜作り続けた治療薬。

様々な生物に試したが、彼女に効くかどうかなど分からない。それでも作ったのは、こんな時が来ると分かっていたからかもしれない。

一心不乱に這い続け、彼は遂に彼女の下へ辿り着いた。彼女も彼同様、地に伏している。

「ああ、なんてことだ……」

胸には槍で貫かれたであろう深い傷がある。他にも傷はあるが、これが致命的な一撃だったのだろう。

彼は彼女に寄り添い、体に巻き付けていた医療箱から小瓶を取り出した。



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