6: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/12/10(月) 00:47:30.72 ID:/688KgEE0
空の星が増えてきた。三日月も、より一層光を強くした。すれ違う人は少なくなっていって、僕たちは、どんどん二人きりになっていく。
冷たい風がふいた。湯冷めするのは避けないといけない。もうロケはないけれど、仕事は明後日以降もある。僕はプロデューサーとして、比奈はアイドルとして、体調を崩してしまわないようにしなければならない
でも、僕たちは誰かに言われたわけでもなく、互いに言うのでもなく。
ゆっくりと、ゆっくりと、残り75メートルを消費していった
「寒くない?」
「大丈夫、体がいい具合に冷めるっスから」
彼女も僕も、寒さを感じているはずだ。なのに、歩くのをやめようとしそうになる。
ゆっくりと歩いている最中に、寒さ以外も僕らを取り囲む。地面と靴の裏が擦れる音と、喉に残る牛乳の感触。それから、隣からほのかに届くシャンプーの匂い。
何故かそれらが愛おしくて、心地よくて。
この感情だけは、他人にどうしても伝えられないだろう。このぬるま湯のような心地は、誰にも伝えることができないのだろう
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